肝臓専門外来
MASLD/MASH
代謝異常を背景として起こる脂肪肝を代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)、その中でも炎症や肝細胞障害を伴う状態を代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)と呼びます。
健康診断で脂肪肝を指摘されたら、本当に大切なのは「肝臓が硬くなっていないか」を調べることです
健康診断で脂肪肝を指摘されても、多くの方がすぐに肝硬変になるわけではありません。
しかし一部の方では、肝臓に炎症が続くことで徐々に線維化(肝臓が硬くなること)が進行し、将来的に肝硬変や肝がんへ進行することがあります。
脂肪肝の診療で最も重要なのは、「脂肪があるかどうか」だけではなく、「肝臓の線維化が進んでいないか」を評価することです。
代謝異常を背景として起こる脂肪肝を代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)、その中でも炎症や肝細胞障害を伴う状態を代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)と呼びます。
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)ってどんな病気?
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD:Metabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease)とは、脂肪肝に加え、過体重(日本人ではBMI≧23 kg/㎡)、耐糖能異常、高血圧、高中性脂肪血症、低HDL血症のいずれかを併発している疾患を指します。MASLDは以前、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:Non-Alcoholic Fatty Liver Disease)と呼ばれていました。しかし、欧米では「Alcoholic」は「飲んだくれ」、「Fatty」は「太っちょ」のような意味合いも持つため、社会的な偏見(スティグマ)を生む名称を変えるべく、欧米の関連学会より2023年6月に新たな名称が提唱されました。日本の消化器病学会と肝臓学会でも同年9月に名称変更への賛同声明がなされ、現在このような名称となりました。
代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)ってどんな病気?
MASH(Metabolic Dysfunction-Associated Steatohepatitis)は、MASLDの一部でみられる進行した病態です。
脂肪肝に加えて肝臓に炎症や肝細胞障害が起こり、長期間続くと線維化が進行し、肝硬変や肝がんへ進展することがあります。
従来のNASH(非アルコール性脂肪肝炎)に相当する病態ですが、MASLDと同様に名称が変更されました。
ただし、MASLDのすべてがMASHへ進行するわけではありません。
そのため、現在どの段階にあるのかを適切に評価することが重要です。

どのような方が線維化しやすいのでしょうか
次のような方では、線維化が進行しやすいことが知られています。
- 糖尿病がある
- 肥満(特に内臓脂肪型肥満)
- 高血圧や脂質異常症を合併している
- 肝機能異常(AST・ALT)が続いている
- 年齢が高い
- FIB-4 indexが高値
このような方では、腹部エコーだけでなく、肝臓の硬さを評価する検査をおすすめします。
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患/代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASLD/MASH)の検査
MASLDやMASHでは、「脂肪肝があるかどうか」よりも、「線維化がどの程度進んでいるか」を調べることが重要です。
まずは健康診断や採血結果から計算できるFIB-4 indexで線維化リスクを評価します。
必要に応じて、
- ヒアルロン酸
- IV型コラーゲン7S
- M2BPGi
などの肝線維化マーカーを測定することもあります。
さらに近年では、エラストグラフィの進歩により、肝生検を行わなくても肝臓の硬さを評価できるようになりました。
当院ではフィブロスキャン検査を行っています
当院ではフィブロスキャンを用いて、肝臓の脂肪量(CAP)・肝臓の硬さ(線維化)を短時間で同時に測定しています。痛みはなく、繰り返し検査できるため、肝硬変や肝がんにつながるリスク評価や経過観察にも適しています。
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患/代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASLD/MASH)の治療
食事療法・運動療法
治療の基本は生活習慣の改善です。
肥満のある方では7%程度の減量でMASHの改善、10%程度の減量で線維化の改善が期待できると報告されています。一方で、肥満のない方や高齢の方では、一律に減量を目標とするのではなく、個々の状態に応じた目標設定が重要です。
糖尿病・高血圧・脂質異常症の管理
MASLD/MASHは生活習慣病と密接に関連しています。
- 糖尿病
- 高血圧
- 脂質異常症
を適切に治療することが、肝臓だけでなく全身の健康維持にもつながります。
薬物療法
近年、MASLD/MASHに対する治療薬の開発が進み2026年には日本でウゴービ®(セマグルチド)がMASHに対する治療薬として承認されました。日本で初めてMASHを適応とした薬剤です。
一方で、薬物療法の対象となる患者さんは限られており、適応や施設要件などに基づいて使用されます。
そのため、MASHと診断されたすべての患者さんが薬物療法を受けるわけではありません。
治療の基本は、食事療法・運動療法による生活習慣の改善と、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの併存疾患を適切に管理することです。
当院ではまず、フィブロスキャンなどを用いて肝臓の脂肪量や線維化の程度を評価し、その結果に応じて適切な治療方針をご提案します。必要に応じて、高度医療機関と連携した診療も行っています。
このような方はご相談ください
- 健診で脂肪肝を指摘された
- AST・ALT・γ-GTP高値を指摘された
- 糖尿病や肥満があり脂肪肝が心配
- 肝硬変への進行リスクを詳しく知りたい
- フィブロスキャンで肝臓の硬さを調べたい
よくある質問
MASLDとは何ですか?脂肪肝とは違う病気ですか?
MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)は、肥満や糖尿病、高血圧、脂質異常症などの代謝異常を背景に起こる脂肪肝のことです。
以前は「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」と呼ばれていましたが、2023年に国際的な名称変更が行われ、現在はMASLDという名称が用いられています。
一般的に「脂肪肝」と呼ばれている病気の多くがMASLDに含まれます。
MASHとは何ですか?
MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)は、MASLDの一部でみられる進行した病態です。
脂肪がたまるだけではなく、肝臓に炎症が起こり、線維化(肝臓が硬くなること)が進行すると、将来的に肝硬変や肝がんにつながることがあります。
ただし、MASLDのすべてがMASHへ進行するわけではありません。
健診で脂肪肝と言われました。すぐに受診した方がよいですか?
脂肪肝そのものがすぐに命に関わる病気ではありませんが、一部の方では線維化が進行していることがあります。
- 特に次のような方は、一度専門医への相談をおすすめします。
- AST・ALT・γ-GTP高値が続いている
- 糖尿病がある
- 肥満がある
- 高血圧や脂質異常症がある
- 家族に肝疾患の方がいる
肝臓の線維化はどのように調べますか?
採血で計算するFIB-4 indexや、フィブロスキャンなどを組み合わせて評価します。
フィブロスキャンは超音波を利用した検査で、痛みなく短時間で肝臓の硬さ(線維化)と脂肪量を測定できます。
近年では、肝生検を行わずに線維化を評価できる検査として広く利用されています。
肝生検は必ず必要ですか?
必ずしも必要ではありません。
多くの患者さんでは、採血やフィブロスキャンなどの非侵襲的検査で十分に評価できます。
ただし、診断が難しい場合や、より詳しい評価が必要と判断された場合には、肝生検を検討することがあります。
MASHは治りますか?
早期であれば改善が期待できます。
体重減少や運動、糖尿病・高血圧・脂質異常症の適切な治療によって、肝臓の炎症や脂肪が改善することがあります。
一方、進行した線維化は完全に元に戻らないこともあるため、早期に発見し、適切な治療を始めることが重要です。
MASHの治療薬はありますか?
2026年、日本で初めてMASHを対象とした治療薬(ウゴービ®)が承認されました。
ただし、すべての患者さんが治療の対象となるわけではなく、適応や施設要件などに基づいて使用されます。
まずは肝臓の状態を正確に評価し、ご自身に適した治療方針を決めることが大切です。
フィブロスキャンはどのくらいの頻度で受ければよいですか?
肝臓の状態によって異なります。
一般的には、線維化の進行リスクがある方では定期的な評価が推奨されます。
当院では、採血結果や生活習慣の変化もあわせて確認しながら、適切な検査間隔をご提案しています。
MASLDとアルコール性脂肪肝は何が違いますか?
MASLDは、肥満や糖尿病などの代謝異常を背景とする脂肪肝です。
一方、アルコールが主な原因となる脂肪肝は**ALD(アルコール関連肝疾患)**と呼ばれます。
近年は、代謝異常があり、かつ一定量以上の飲酒がある場合をMetALDと分類するようになりました。
実際の診療では、飲酒量だけでなく、肥満や糖尿病などの代謝異常の有無も含めて総合的に診断します。
当院ではどのような診療を受けられますか?
- 当院では、健康診断で脂肪肝や肝機能異常を指摘された方に対して、
- 血液検査
- FIB-4 indexによる線維化リスク評価
- フィブロスキャンによる脂肪量・線維化の評価を行い、一人ひとりに適した治療方針をご提案しています。
薬物療法が必要と考えられる場合には、適応や治療内容について十分にご説明し、必要に応じて高度医療機関とも連携しながら診療を行います。
健診で「脂肪肝」と言われましたが、自覚症状がありません。受診は必要ですか?
はい、自覚症状がなくても一度は評価を受けることをおすすめします。
MASLDやMASHは初期にはほとんど症状がありません。しかし、症状がないまま線維化が進行していることもあります。
特に糖尿病や肥満、高血圧、脂質異常症がある方では、将来的な肝硬変や肝がんのリスクを評価するために、FIB-4 indexやフィブロスキャンによる線維化評価が有用です。
