消化器内科
大腸憩室
大腸憩室とは、大腸の壁の一部が外側に袋状に飛び出した状態をいいます。
大腸憩室とは
加齢や腸管内圧の上昇などにより、大腸の壁の弱い部分から粘膜が押し出されることで形成されます。
大腸憩室があること自体は病気ではなく、年齢とともに多くの方にみられる変化です。 多くの場合は症状がなく、大腸カメラやCT検査で偶然見つかります。
大腸憩室は40歳頃から増え始め、50歳代では約3人に1人、80歳代では半数以上に認められると報告されています。食生活の欧米化や高齢化に伴い、日本でも年々増加しています。
一方で、大腸憩室がある方では、憩室炎や憩室出血といった合併症を起こすことがあります。これらは症状や治療法が異なるため、それぞれを正しく理解することが大切です。
大腸憩室は、右側結腸(盲腸〜上行結腸)にも左側結腸(S状結腸など)にもできます。日本では従来、右側結腸に多いとされてきましたが、高齢になるにつれてS状結腸など左側結腸の憩室も増えてきます。
大腸憩室で起こる2つの代表的な合併症
憩室炎
憩室の中に便などが入り込み、細菌による炎症が起こった状態です。
腹痛や発熱、押すと痛みが強くなる(圧痛)、吐き気、食欲不振などの症状が現れます。炎症が強い場合には、大腸に穴があく(穿孔)などの重い合併症を起こすこともあります。
憩室出血
憩室の近くを走る血管が破れて出血した状態です。
突然、痛みを伴わない血便が特徴で、便器が真っ赤になるほど大量に出血することもあります。
大腸憩室出血は約70〜90%で自然に止血するとされています。しかし、出血量が多い場合や出血が続く場合には、入院や内視鏡による止血治療が必要になることがあります。まれに、血管内治療(カテーテル治療)や手術が必要となることもあります。
血便がみられた場合は、自然に止血する可能性があっても自己判断せず、できるだけ早く医療機関を受診することが大切です。特に、めまいやふらつきを伴う場合や、大量の血便が続く場合は、速やかな受診が必要です。

どのような症状があれば受診した方がよいですか?
大腸憩室があるだけでは、通常は症状はありません。
しかし、次のような症状がある場合は、憩室炎や憩室出血を起こしている可能性があるため、早めに医療機関を受診しましょう。
- 発熱を伴う腹痛
- 徐々に強くなる腹痛
- 押すと強く痛む腹部の痛み
- 突然の血便
- 繰り返す血便
- めまいやふらつきを伴う血便
代表的な症状
- 腹痛と発熱は憩室炎
- 痛みを伴わない血便は憩室出血
また、腹痛が急激に強くなったり、血便が大量に出たりする場合には、緊急の治療が必要となることもあります。速やかに医療機関を受診してください。
大腸憩室の診断
大腸カメラ(大腸内視鏡検査)
大腸カメラでは、大腸の内側を直接観察し、憩室の有無や数、位置を確認することができます。
無症状の大腸憩室は、大腸カメラを受けた際に偶然見つかることがほとんどです。
また、血便の原因として大腸憩室出血が疑われる場合には、大腸がんや大腸ポリープなど他の病気との鑑別のためにも大腸カメラが重要です。
CT検査
腹痛や発熱がある場合には、憩室炎を疑ってCT検査を行います。
CT検査では、憩室の周囲の炎症や膿瘍(うみ)の有無、穿孔(大腸に穴があくこと)などを確認でき、重症度の評価にも役立ちます。
また、大量の血便がある場合には、救急外来で造影CT検査を行い、出血部位を評価することもあります。
治療方法
治療は、症状の有無や合併症の有無によって異なります。
無症状の大腸憩室
大腸憩室があるだけで症状がない場合は、特別な治療は必要ありません。
便秘がある場合には、食物繊維や水分を十分に摂り、便秘を改善することが大切です。
憩室炎
軽症の憩室炎では、食事内容の調整や、必要に応じた抗菌薬による治療で改善することが多く、外来で治療できる場合もあります。
一方で、高熱や強い腹痛がある場合や、CT検査で膿瘍や穿孔(大腸に穴があくこと)が認められる場合には、入院による点滴治療や、必要に応じて手術が必要となることがあります。
憩室出血
大腸憩室出血は約70〜90%で自然に止血するとされています。
しかし、出血量が多い場合や出血が続く場合には、入院のうえで内視鏡による止血治療を行います。まれに、血管内治療(カテーテル治療)や手術が必要となることもあります。
日常生活で気をつけること
大腸憩室があるだけで症状がない場合は、日常生活に大きな制限はありません。
一方で、憩室炎のリスクを減らし、腸の健康を保つためには、次のような生活習慣を心がけることが大切です。
- 食物繊維を十分に摂取する
- 十分な水分を摂る
- 便秘を予防し、強くいきまないようにする
- 適度な運動を取り入れる
これらは便通を整え、腸内圧の上昇を防ぐことにつながります。
また、腹痛や血便などの症状が現れた場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診しましょう。
受診した方がよい症状
次のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
- 発熱を伴う腹痛がある
- 徐々に強くなる腹痛がある
- 押すと強く痛む腹痛がある
- 突然、血便が出た
- 血便を繰り返す
- 血便に加えて、めまいやふらつきがある
これらは、憩室炎や憩室出血のほか、大腸がんや虚血性腸炎など他の病気でもみられる症状です。
自己判断で様子を見るのではなく、早めに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが大切です。
当院では、症状や経過に応じて大腸カメラやCT検査などを組み合わせて診断を行い、必要に応じて専門医療機関とも連携しながら治療を進めています。
よくある質問
大腸憩室があると言われました。治療は必要ですか?
症状がなく、大腸憩室があるだけであれば、通常は特別な治療は必要ありません。便秘を予防し、規則正しい排便習慣を心がけることが大切です。
大腸憩室はがんになりますか?
いいえ。大腸憩室自体が大腸がんになることはありません。 ただし、血便や腹痛は大腸がんでもみられる症状のため、症状がある場合は自己判断せず、医療機関を受診しましょう。
大腸憩室があっても大腸カメラは受けられますか?
はい。大腸憩室があっても通常は大腸カメラを受けることができます。大腸カメラでは憩室の有無だけでなく、大腸がんや大腸ポリープなど他の病気も確認できます。
大腸憩室炎は繰り返しますか?
憩室炎は再発することがあります。便秘の予防や生活習慣の改善を心がけることが大切です。再発を繰り返す場合には、さらに詳しい検査や治療が必要になることがあります。
血便が出ても自然に止まれば受診しなくてもよいですか?
大腸憩室出血は自然に止血することも多い病気ですが、血便の原因は憩室出血だけではありません。 大腸がんなど他の病気の可能性もあるため、自己判断せず医療機関を受診することをおすすめします。
一度できた大腸憩室は治りませんか?
一度できた大腸憩室が自然になくなることはほとんどありません。しかし、憩室があるだけであれば多くは症状がなく、特別な治療も必要ありません。大切なのは、便秘を予防し、憩室炎や憩室出血などの合併症を起こさないように生活習慣を整えることです。
大腸憩室があっても胃のバリウム検査(胃X線検査)は受けられますか?
大腸憩室があることだけを理由に、胃のバリウム検査(胃X線検査)が受けられなくなるわけではありません。
一方で、一部の健診施設では、安全面を考慮して、大腸憩室がある方には胃バリウム検査を行わず、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)を勧めている場合があります。
また、憩室炎を起こしているときや、腹痛・発熱などの症状があるときは、検査を延期した方がよいことがあります。
ご自身が胃バリウム検査の対象になるか不安な場合は、事前に健診施設や医療機関へ相談すると安心です。
大腸憩室は、大腸の壁の一部が外側へ袋状に飛び出した状態で、年齢とともに多くの方にみられる変化です。憩室があるだけでは、多くの場合は症状がなく、特別な治療も必要ありません。
一方で、大腸憩室からは、腹痛や発熱を伴う憩室炎と、突然の血便を起こす憩室出血という、病態の異なる合併症が起こることがあります。
発熱を伴う腹痛や徐々に強くなる腹痛がある場合、突然の血便や繰り返す血便がみられた場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診することが大切です。特に、大量の血便やめまい、ふらつきを伴う場合は、速やかな受診が必要です。
大腸憩室があるだけで日常生活を大きく制限する必要はありませんが、便秘を予防し、食物繊維や水分を十分に摂り、適度な運動を心がけましょう。
当院では、症状や経過に応じて大腸カメラやCT検査などを行い、憩室炎や憩室出血だけでなく、大腸がんや虚血性腸炎など他の病気との鑑別も含めて診療しています。腹痛や血便がある方、大腸憩室について不安がある方はご相談ください。
