前皮神経絞扼症候群(ACNES)
(Anterior Cutaneous Nerve Entrapment Syndrome)
前皮神経絞扼症候群ってどんな病気?
前皮神経絞扼症候群(ACNES:アクネス)は、腹壁(お腹の筋肉や皮膚)を走る神経が締めつけられることで起こる慢性的な腹痛の病気です。内臓ではなく、腹壁の神経が痛みの原因である点が大きな特徴です。
腹痛というと、胃や腸などの内臓の病気を思い浮かべる方が多いですが、ACNESは内視鏡検査や画像検査では異常が見つからず、「原因不明の腹痛」「ストレスのせい」「気のせい」などとされ、長期間つらい思いをされている方も少なくありません。
疫学(どのような方に多い病気か)
ACNESは決して珍しい病気ではなく、慢性腹痛の原因の数%〜10%程度を占めるとも言われています。しかし、十分に知られていないため、診断に至っていないケースが多いのが現状です。
年齢・性別を問わず発症しますが、30~50歳台の女性に多いとされています。
比較的若年者〜中年の方に多いとされます。
出産後や腹部手術後、体重変動後に発症することもあります。
前皮神経絞扼症候群(ACNES)の症状は?
ACNESの痛みには、いくつか特徴があります。
- お腹のある一点がピンポイントで痛む
- 指で押すと強い痛みが出る
- 動作(起き上がる、体をひねる、咳、歩行)で痛みが強くなる
- 食事や排便とはあまり関係がない
- 長期間(数か月〜数年)続くことがある
痛みの部位は、へその周囲や下腹部に多く、左右どちらか一方に出ることが多いのも特徴です。痛みの性質は「刺すような痛み」「ズキッとする痛み」と表現されることがあります。
なぜ痛みが起こるのか
腹壁には、背骨から出た神経が筋肉の間を通って皮膚まで走っています。この神経(前皮神経)が、筋膜という硬い組織を貫く部分で圧迫・絞扼されることで、痛みが生じると考えられています。
原因としては、
- 姿勢の変化や筋肉の緊張
- 急な体重変動
- 手術や外傷の影響
などがありますが、はっきりした原因が見つからないことも少なくありません。
前皮神経絞扼症候群(ACNES)の診断は?
ACNESの診断は、問診と診察が非常に重要です。検査だけで診断がつく病気ではありません。
診断のポイントには以下があります。
- 痛む場所が明確である
- 押すと強い圧痛がある。また、腹筋に力を入れて痛い場所を押すと痛みが強くなる(Carnett〈カーネット〉徴候)
血液検査やCT、
内視鏡検査などで内臓の病気でない事を確認の上、これらの所見を総合して診断します。
前皮神経絞扼症候群(ACNES)の治療は?
ACNESの治療は、神経の痛みを和らげることを目的として行います。
局所麻酔薬の注射(トリガーポイント注射)
痛みの原因となっている部位に少量の麻酔薬を注射します。
診断と治療を兼ねる方法で、多くの方で効果が期待できます。
その他の治療
保存的治療で十分な効果が得られない場合には、専門医療機関でさらに高度な治療が検討されることもありますが、多くの方は注射治療で改善が期待できます。
ACNESが疑われる腹痛とは
次のような腹痛がある場合、ACNESの可能性があります。
- 検査では異常がないのに腹痛が続く
- 痛む場所を指で正確に示せる
- 体を動かすと痛みが強くなる
- 何度も医療機関を受診しているが原因が分からない
このような場合、「気のせい」「ストレス」と片付けず、当院でご相談ください。