自己免疫性肝炎(AIH)ってどんな病気?症状・検査・治療をわかりやすく解説
健康診断で
「ASTが高い」
「ALTが高い」
「抗核抗体が陽性と言われた」
と指摘され、不安になってこのページをご覧になっている方もいらっしゃると思います。
自己免疫性肝炎(AIH)は、本来は体を守る免疫が、自分自身の肝臓を誤って攻撃してしまう病気です。
以前は進行してから見つかることもありましたが、現在では健康診断や人間ドックをきっかけに、早い段階で診断される患者さんも増えています。
また、適切な治療を開始することで、多くの患者さんが通常の生活を送りながら長く経過されています。
この記事では、自己免疫性肝炎(AIH)の症状、検査、治療、日常生活で気を付けることについて、できるだけわかりやすく解説します。
この記事でわかること
・自己免疫性肝炎(AIH)とはどのような病気か
・なぜAST・ALTが高くなるのか
・どのような症状があるのか
・どのような検査で診断するのか
・治療や日常生活で気を付けること
自己免疫性肝炎(AIH)とは?
肝臓は、栄養の代謝や解毒、たんぱく質の合成など、私たちの体を健康に保つために重要な働きをしている臓器です。
自己免疫性肝炎(AIH)は、本来は細菌やウイルスなどから体を守る免疫が、自分自身の肝臓を誤って攻撃してしまう病気です。
自己免疫とは、本来は体を守るために働く免疫が、何らかの理由で自分自身の臓器を異物と勘違いして攻撃してしまう状態をいいます。
AIHでは、この免疫の働きによって肝細胞に炎症が起こり、肝細胞が傷つきます。
その結果、血液検査ではASTやALTが高くなります。
AIHの原因はまだ完全には分かっていません。
しかし、免疫に関係する遺伝的な体質に加え、ウイルス感染や一部の薬剤など、さまざまな環境要因が発症のきっかけになると考えられています。
AIHは中年以降の女性に多い病気ですが、若い方や男性にもみられます。
AIHは慢性的に経過することが多く、初期には自覚症状がほとんどありません。
そのため、健康診断や人間ドックでASTやALTの上昇をきっかけに見つかる患者さんも多くいらっしゃいます。
一方で、一部の患者さんでは急性肝炎のように急激に発症し、強い倦怠感や黄疸などの症状が現れることもあります。
AIHではどのような症状がありますか?
自己免疫性肝炎(AIH)は、初期には自覚症状がほとんどありません。
現在では健康診断や人間ドックでASTやALTの上昇をきっかけに見つかることが多く、診断時には自覚症状がない患者さんも少なくありません。
そのため、
「症状がないから大丈夫」というわけではなく、早期に診断し、適切な治療を開始することが大切です。
症状がみられる場合
症状がある場合には、
全身のだるさ(倦怠感)
疲れやすさ
食欲低下
黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
などがみられることがあります。
急激に発症することもあります。
AIHの多くは慢性的に経過しますが、一部の患者さんでは急性肝炎のように急激に発症することがあります。
強い倦怠感や黄疸などが現れた場合には、早めに医療機関を受診することが大切です。
AIHはどのように診断するのでしょうか?
自己免疫性肝炎(AIH)は、一つの検査だけで診断できる病気ではありません。
血液検査や画像検査を組み合わせ、ほかの肝臓の病気ではないことを確認しながら、総合的に診断します。
血液検査まず血液検査で、ASTやALTなど肝細胞の障害を反映する項目を確認します。
さらに、AIHに特徴的な抗核抗体(ANA)やIgGを測定します。
必要に応じて、ほかの自己抗体なども測定し、診断の参考にします。
また、ビリルビンやアルブミン、凝固能なども確認し、肝臓の働きを総合的に評価します。
腹部超音波検査
AIHが疑われた場合には、腹部超音波検査を行います。
肝臓の状態を確認するとともに、脂肪肝や肝腫瘍など、ほかの肝臓や胆道の病気がないかを確認します。
また、当院では肝臓だけでなく、胆のう・膵臓・腎臓など腹部全体も観察しています。
必要に応じて肝生検
現在では、多くの患者さんは血液検査や画像検査で診断できます。
一方で、診断が難しい場合や、ほかの肝疾患との区別が必要な場合には、肝生検を行うことがあります。
採取した肝臓の組織を詳しく調べることで、より正確な診断につながります。
AIHは総合的に診断します
AIHは、抗核抗体やIgGが陽性だからといって、それだけで診断できる病気ではありません。
血液検査や腹部超音波検査、必要に応じて肝生検などの結果を組み合わせ、ほかの肝臓の病気ではないことも確認しながら総合的に診断します。
AIHはどのように治療しますか?
自己免疫性肝炎(AIH)では、肝臓の炎症を抑え、肝機能を正常に保つことを目標に治療を行います。
現在では、早期に診断し適切な治療を開始することで、多くの患者さんが通常の生活を送りながら長く経過されています。
ステロイド(プレドニゾロン)が基本治療です
AIHの治療では、**ステロイド(プレドニゾロン)**が基本となります。
ステロイドには、免疫の過剰な働きを抑え、肝臓の炎症を改善する作用があります。
治療を開始すると、多くの患者さんでASTやALTなどの肝機能が改善します。
ステロイドは少しずつ減量します
AIHでは、血液検査でASTやALTなどの改善を確認しながら、ステロイドを少しずつ減量していきます。
病状が安定した後は、再燃を防ぐため、少量のステロイドによる維持療法を続けることが一般的です。
ステロイドは長年使用され、効果や安全性について多くの知見が蓄積されているお薬です。副作用をできるだけ少なくするため、病状に合わせて内服量を調整しながら治療を続けます。
自己判断でお薬を中止すると病気が再燃することがあるため、医師の指示に従って内服を続けることが大切です。
効果が十分でない場合
ステロイドだけで十分な改善が得られない場合や、ステロイドを減量する際には、アザチオプリンなどの免疫抑制薬を併用することがあります。
アザチオプリンを使用する際には、副作用のリスクを評価するため、必要に応じてNUDT15遺伝子多型を確認したうえで治療を開始します。
治療の目標
AIHの治療では、ASTやALTを正常化し、肝臓の炎症を十分に抑えることが重要です。
適切な治療を継続することで、肝硬変への進行や肝不全のリスクを減らすことが期待できます。
診断後はどのように経過をみるのでしょうか?
AIHでは、症状がなくても定期的な通院が大切です。
病気が安定していても、自己判断でお薬を中止したり、通院をやめたりすると再燃することがあります。
そのため、定期的な検査で治療効果を確認しながら、病状に合わせてお薬を調整していきます。
血液検査
定期的に血液検査を行い、AST・ALTなどの肝機能やIgGなどを確認します。
血液検査の結果をもとに、肝臓の炎症が十分に抑えられているかを評価し、必要に応じてステロイドや免疫抑制薬の量を調整します。
腹部超音波検査
腹部超音波検査では、肝臓の形態や肝硬変への進行がないかを確認します。
また、肝臓だけでなく、胆のうや膵臓、腎臓など腹部全体も観察し、ほかの病気がないかもあわせて確認します。
FibroScan検査(肝硬度測定)
当院では**FibroScan検査(肝硬度測定)**を行っており、痛みなく短時間で肝臓の硬さを測定できます。
肝臓の線維化の程度を評価することで、現在の病状を把握し、その後の経過観察にも役立てています。
継続的な治療が大切です
AIHでは、症状がなくても肝臓に炎症が残っていることがあります。
そのため、定期的な診察と検査を続けながら、病状に合わせて治療を継続することが大切です。
AIHではどのような合併症がありますか?
自己免疫性肝炎(AIH)では、肝臓だけでなく、ほかの自己免疫疾患を合併することがあります。
また、治療が遅れたり、肝臓の炎症が長期間続いたりすると、肝硬変へ進行することがあります。
すべての患者さんに起こるわけではありませんが、必要に応じて追加の検査や専門科と連携しながら診療を行います。
他の自己免疫疾患を合併することがあります
AIHでは、ほかの自己免疫疾患を合併することがあります。
代表的なものとして、
シェーグレン症候群
慢性甲状腺炎(橋本病)
関節リウマチ
などが知られています。
診察や血液検査でこれらの病気が疑われる場合には、必要に応じて追加の検査を行います。
原発性胆汁性胆管炎(PBC)を合併することがあります
一部の患者さんでは、**原発性胆汁性胆管炎(PBC)**を合併することがあります。
この状態はAIH-PBCオーバーラップ症候群と呼ばれ、AIHまたはPBC単独とは治療方針が異なる場合があります。
そのため、血液検査や画像検査などを総合的に評価し、適切な治療を行います。
肝硬変へ進行することがあります
AIHでは、肝臓の炎症が長期間続くと、肝臓が硬くなる肝硬変へ進行することがあります。
しかし現在では、早期に診断し適切な治療を継続することで、肝硬変への進行を抑えられる患者さんが増えています。
そのため、定期的な血液検査や腹部超音波検査、FibroScan検査などを行いながら病状を確認していきます。
AIHとうまく付き合うために
AIHと診断されても、過度に生活を制限する必要はありません。
適切な治療と定期的な通院を続けることで、多くの患者さんが仕事や家事、趣味など、普段どおりの生活を送っています。
日常生活では、次のような点を心掛けましょう。
・自己判断でお薬を中止しない
・症状がなくても定期的に通院する
・バランスの良い食事を心掛ける
・適度な運動を取り入れる
・飲酒については主治医と相談する
・発熱や咳など体調の変化がある場合は、早めに主治医へ相談する
よくある質問(FAQ)
Q AIHは治る病気ですか?
A 現在のところ、AIHを完全に治す治療法はありません。
しかし、早期に診断し、適切な治療を継続することで肝臓の炎症を抑え、多くの患者さんが通常の生活を送りながら長く経過されています。
Q ステロイドは怖い薬ですか?
ステロイド(プレドニゾロン)は、AIHの治療に欠かせないお薬で、多くの患者さんで高い治療効果が期待できます。
一方で、長期間使用すると、
感染症にかかりやすくなる
骨粗鬆症
糖尿病
高血圧
白内障・緑内障
などの副作用がみられることがあります。
そのため、定期的な診察や血液検査を行いながら、病状に合わせてできるだけ少ない量へ調整していきます。
また、治療開始直後や高用量のステロイドを内服している時期には、感染症への注意が必要となることがあります。
生活上の注意点については、病状や内服量に応じてご説明しますので、ご不明な点があればお気軽にご相談ください。
Q 一生お薬を飲み続ける必要がありますか?
A AIHでは、病状が落ち着いた後も再燃を防ぐため、少量のステロイドや免疫抑制薬による維持療法を続けることが一般的です。
一方で、患者さんによって治療期間は異なり、病状が安定している場合には、慎重に減量や中止を検討することもあります。
自己判断でお薬を中止すると再燃することがあるため、必ず主治医と相談しながら治療を進めましょう。
Q 血液検査が正常になれば、お薬をやめてもよいですか?
A AIHでは、血液検査でASTやALTが正常になっても、肝臓の炎症が完全に治まっていないことがあります。
そのため、血液検査の結果だけで自己判断してお薬を中止すると、病気が再燃することがあります。
病状が安定している場合でも、お薬の減量や中止は主治医と相談しながら慎重に進めることが大切です。
Q 普通に仕事や日常生活は送れますか?
A はい。適切な治療を継続することで、多くの患者さんが仕事や家事、趣味など、普段どおりの生活を送っています。
ただし、治療開始直後や高用量のステロイドを内服している時期には、感染症への注意が必要となることがあります。
生活上の注意点については、病状や内服量に応じてご説明しますので、ご不明な点があればお気軽にご相談ください。
Q 妊娠・出産はできますか?
A 妊娠・出産が可能な方も多くいらっしゃいます。
妊娠を希望される場合や妊娠中は、病状や内服薬について事前に主治医と相談することが大切です。
ステロイドは病状に応じて妊娠中も継続されることがあります。また、アザチオプリンについても、病状に応じて継続が検討される場合があります。
自己判断でお薬を中止せず、必ず主治医の指示に従ってください。
Q AIHは遺伝する病気ですか?
A AIHは、遺伝だけで発症する病気ではありません。
現在では、遺伝的な体質に加えて、感染症や薬剤、環境要因など、さまざまな要因が関係して発症すると考えられています。
そのため、ご家族にAIHの方がいても、必ず発症するわけではありません。
過度に心配する必要はありませんが、健康診断などで肝機能異常を指摘された場合には、早めに医療機関へ相談することをおすすめします。
Q AIHは肝がんになりますか?
A AIHが進行して肝硬変になると、肝がんのリスクが高くなることがあります。
一方で、現在では早期診断と適切な治療により、病気の進行を抑えられる患者さんが増えています。
必要に応じて定期的な血液検査や腹部超音波検査を行い、経過を確認していきます。
当院からのメッセージ
自己免疫性肝炎(AIH)は、以前は進行性の病気という印象がありましたが、現在では早期に診断し、適切な治療を継続することで、多くの患者さんが通常の生活を送りながら長く経過できるようになっています。
健康診断でASTやALTの異常を指摘された場合や、原因の分からない肝機能異常が続く場合には、一人で悩まず、まずはご相談ください。
また、すでにAIHと診断され治療中の方も、定期的な血液検査や画像検査を行いながら、お一人おひとりの病状に合わせた治療を続けていくことが大切です。
当院では、診断だけでなく、治療やその後の経過観察まで、患者さん一人ひとりに寄り添った診療を心掛けています。