脂肪肝とは、肝細胞に中性脂肪が蓄積した状態のことで、さまざまな肝障害を引き起こします。食事で摂った脂質や糖質は小腸で吸収され、肝臓で脂肪酸やブドウ糖に分解され中性脂肪となります。中性脂肪は肝細胞の中に溜め込まれ、必要に応じてエネルギーとして用いられます。運動不足の状態で脂質や糖質を摂りすぎると使用するエネルギーよりも中性脂肪の方が多くなり、肝細胞に溜まっていきます。肝細胞の5%以上の細胞の中に脂肪が溜まっている状態が脂肪肝と定義されます。一方、脂肪性肝疾患(SLD)は、肝臓に過剰な脂肪が蓄積しただけでなく、肝炎や線維化などのさまざまな病因を包含した包括的な疾患分類の新しい概念です。
今や日本人の3人に1人が脂肪肝と言われており、肥満者の80%に脂肪肝がみられます。BMI(body mass index : 体格指数)別にみてみると、諸外国では30以上を肥満とすることが多い中、日本ではBMI25以上の人を「肥満」としています。BMIが高い人ほど脂肪肝の頻度も高い傾向にありますが、BMIが25未満で肥満体型ではない見た目がスリムな痩せ型の人にも脂肪肝がみられる場合があります。
脂肪肝は原因によって分類されており、ひとつはお酒の飲み過ぎによる脂肪肝で、アルコール関連脂肪性肝疾患(ALD : Alcohol Associated (Related) Liver Disease)と呼ばれます。これはアルコールが分解される際に中性脂肪が合成されやすくなるからです。飲酒が原因なのか、そうでないかは、お酒に含まれるアルコールの量によって区別されており、飲酒を原因としない脂肪性肝疾患の定義は、飲むお酒に含まれるアルコールであるエタノール(エチルアルコール)に換算して1日あたり男性で30グラム以下、女性で20グラム以下の飲酒に留まっていることとされています。
お酒をほとんど飲んでいなくても、肥満、糖尿病、脂質異常症などにより脂肪肝になることがあります。内臓脂肪組織に脂肪が溜まりすぎて内臓肥満の状態になると、余計な脂肪酸や全身に炎症を起こすと考えられているTNF-αやインターロイキン6などのサイトカインを分泌します。これらが過剰に肝臓へ流れ込むことによって、肝臓でも炎症や不純物の処理が追いつかない状態になり、それを処理するため酸化ストレス(肝臓の環境が悪化した状態)が発生し、さらに炎症が強くなっていきます。このような脂肪肝を代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD:Metabolic-Associated Steatotic Liver Disease)と呼びます。
禁酒、適切な体重管理、バランスの良い栄養摂取、適度な運動などの生活習慣の改善が不可欠です。
ご飯、パン、麺類などの主食の過剰摂取、および清涼飲料水やジュースに含まれる果糖は、ブドウ糖よりも肝臓で直接脂肪に変わりやすいため、特に控えましょう。果物も果糖の過剰摂取につながりますので食べすぎないよう注意します。緑黄色野菜はビタミンやミネラルの摂取のためにたくさん食べるようにしましょう。食物繊維は、満腹感を助けカロリー摂取量を減らすだけでなく、摂取した糖質の腸管からの吸収を緩やかにする働きがあり肝臓への負担を減らす効果があります。食事の最初に野菜、きのこ類、海藻類を摂り、良質なタンパク質(青魚、大豆製品など)を摂るよう心がけてください。早食いを避け、夕食は就寝3時間前までに済ませるのが理想です。
運動は1週間に150分以上が望ましいとされています。まずは週に3回程度、1日30分程度の軽く汗ばむ運動を目標にしましょう。レジスタンス運動と言って、じっくり筋肉を鍛える運動も効果があると言われています。筋肉量を増やし基礎代謝を上げることにより、脂肪が燃えやすい体を目指します。
ご自分の生活スタイルに見合った食事や運動について医師や管理栄養士などと相談しながら、適度な運動やバランスの取れた食事を心がけ継続することが最も大切です。当院では管理栄養士によるオンライン栄養指導も導入しており、専門的な栄養指導を受けられますのでぜひお役立てください。
また脂肪肝の患者さんは別の生活習慣病もあわせて発症している方が多いため、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの治療も一緒に行っていくことも重要です。